「足助まちづくり宣言」は、足助の町並みが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されたことを記念して、選定の年・平成23年に開催されたシンポジウムで発表された、これからのまちづくりの方向性を掲げ、町並みに関わる人たちの共通認識とするための文言です。その趣旨は、伝統的建造物群保存地区制度をまちづくりの手段として活用し、足助だからこその価値を発信し続け、町並みを住み継ぐことです。
寿ゞ家再生プロジェクトは、この「足助まちづくり宣言」を尊重し、特に4.交流を楽しむ、5.新しい価値を創造する、まちづくりに貢献したいと考えています。
「足助まちづくり宣言」
足助の町並みは、飯盛山や真弓山をはじめとする山々、足助川と巴川の流れなど豊かな自然を背景とし、三河と信州を結ぶ旧伊那街道(中馬街道)に沿って発展してきました。現在も江戸時代後期から各時代にわたる質の高い建物が連なって独特の景観をつくり、この地に生きた先人たちの歴史や文化を伝えています。
この町並みが平成23年6月20日に重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されたことを記念し、私たちは今日ここにシンポジウムを開催し、伝統的建造物群保存地区(伝建)制度を活用したまちづくりについて話し合いました。そして、この場を機会として、足助固有の歴史と文化によって裏打ちされた品格を保ち続け、将来にわたって魅力あるまちであり続けるために、今後私たち自身が実現していくまちづくりの方向性を、ここに集った人たちとともに確認します。
1 足助の魅力を住み継ぐまちづくり
私たちは、伝建制度によるまちづくりを、単に保存や景観の整備だけではなく、この町で人が生活し続けるための一つの手段として考えてきました。豊田市足助伝統的建造物群保存地区保存計画(伝建地区保存計画)でも、保存整備の基本方針のなかに「生活感のあるまちづくり」を掲げています。私たちは、この町が生活の場であり続けるために、先人から受け継いだかけがえのない資産として、次世代やこの町を愛する人たちにこの町並みをより良く住み継ぐ工夫をします。
2 足助を誇る人を育てるまちづくり
まちづくりを進めるためには、生活の場として住む人がいるという以上に、私たち自身が地域の生活や地域のあり方の価値を認識し、それを高める努力が必要です。自分が住む地域を誇る気持ちがなければ、まちづくりは成功しません。かつて足助の町並みも、町を想う人たちによって守られてきました。私たちは、自分の足元の自然や歴史や文化を見つめなおし、理解を深めるとともに、それら身近にあるまちの物語を大切にする人づくりに取り組みます。
3 「お祭り」が似合うまちづくり
足助八幡宮の秋の例祭「足助祭り」、足助神社の祭礼「足助春祭り」は、足助の伝統的な行事であるとともに、年中行事として私たちの生活の一部になっています。お祭りは、自治会組織など共同体としての地域によって運営され、世代を超えて各町の人と人とのつながりを深くする行事です。また、足助のお祭りは、伝統的な町並みや周囲の山や川など、その背景となる魅力的な空間や景観が欠かせません。私たちは、地域のつながりや町並みなどの景観、そしてこの地域での暮らしを含めたお祭りがいつまでも行われ、そしてそのお祭りが似合う町であり続けるよう努力します。
4 交流を楽しむまちづくり
いまや風物詩となった「中馬のおひなさん」や「たんころりん」など、町並みにはさまざまな催事が展開されます。これらの催事には、住んでいる人が自らの楽しみとして参加し、その人たちがいる町を楽しみに訪れる人たちと交流する姿があります。私たちは、足助の町を訪れる人たちとの日常の交流を通して、新たな魅力を引き出すまちづくりをします。また、来訪者だけでなく、伝建地区の範囲を超えて、まちづくりに関係する他の地域とのつながりも大切にします。
5 新しい価値を創造するまちづくり
伝統的な町並みという歴史の積み重なりの中で、時代の変化に沿った暮らしが営まれる町は、保存と活用、観光と生活など、複数の要素の調整や選択を迫られます。しかし私たちは、異なる価値の存在を対立として捉えるのではなく、そこから足助ならではの新しい価値観を生み出す努力をします。かつての足助は、飯盛山に紅葉を植えて観光の地盤を整えたり、「保全を開発と信ずる町」を掲げたりしてきました。私たちは、常に時代に先駆ける新しい価値を創造することも足助の伝統と考え、新たな価値を創造するまちづくりを進めます。
さあ、足助のまちづくりの新たな時代の幕開けです。私たちは、この町を住み継ぎ、足助ならではのまちづくりに挑戦することを、ここに宣言します。
平成23年 8月 6日
足助まちづくり推進協議会
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